〜メグロの小部屋〜:250cc・S5ジュニア メグロ250cc・S5ジュニアは、シリーズの四番目のモデルで1959年、わずか四ヶ月の間に4889台が集中製造されて終わった。 このような状況になったのは、メグロ「1」のベストセラー車であったS3の製造が終わり、次期主力製品として企画されていた新型車 (Fシリーズを主としたOHC4サイクルエンジン車)に移行する予定が、この新型車の思わぬ不評に販売実績が激減。急遽S3に続く 四番目のモデルを用意することとなった。"S4"にならなかったのは、"4"が"死"につながるという忌みを嫌っての事という。 外観はメグロらしいフレーム構成ながら、S3の長めのホイルベースは短くなり、水滴型の燃料タンクは新型車に似たドーム状の形 (良く言えば独車的、悪く言えば「鉄かぶと」)になった。また、新型車に準じウインカーも装備されている。 その他、前後18inの大径で細身(3.00)のタイヤ、実用に適したプランジャー式リア緩衝器などS3の仕様は継承された形であった。 機関はK3型248cc単気筒OHV4サイクルが新たに設計され、性能が向上している(11.5HP/5000rpm)。 電装6v・マグネトー点火、乾式クラッチだが板金プレスによるプライマリチェーンカバーはアルミキャストのブロック構成に変えられた。 なお量産仕様とは別に、烏山工場で独自に左シフト仕様モデルが十数台余り試作されたことが知られて居る。違いはワンオフで設えた、 シフトペダルが左側に移された別体式ミッションと専用プライマリーチェーンケース。それに塗装意匠を省いたメッキ仕様のフェルタンク 等で在る。奇跡的に内1台が地元・烏山の愛乗家の下に現存して在る。 S3のところでも記したように、この時期すでに、他メーカーは2ストをメインに高回転高出力のスポーツタイプ車を発表し始めた状況で S5でしかメグロがたちゆくかなくなっていたことは、メグロに対するブランドイメージが信頼と実用に徹した仕様に特化されていたにも かかわらず、これをうまく活用しきれず、他メーカーに追随しようとして失敗したことが、より経営不振に傾けさせる原因となった。 S5は製造期間がわずか四ヶ月であるにもかかわらず、集中製造されて台数が多かった事もあり、近年各地で発見(笑)されるモデル ではあるが、S3同様既に製造時期から40年も経ち、また急拵えの設計・製造も影響してか、状態のよいものは少ない。 ・・・主要諸元・・・ ・全長:2110mm ・全幅:750mm ・全高:1010mm ・軸間距離:1370mm ・車輌重量:158kg ・機関型式:K3型:単気筒OHV4サイクル ・総排気量:248cc ・最大出力:11.5HP/5000rpm ・最高速度:100km/h ・燃費:47km/リットル ・変速機:前進4段ロータリー ・タイヤ:(前)3.00×18−4 /(後)3.25×18−4 ・始動方式:キック