S-8 の 部屋・バックナンバー

S−8メンテナンス〜資料編〜 (クラッチ機構)




◎ 「S−8メンテナンス」〜資料編〜では、
 みなさまから特に質問の多いメグロのメンテナンスについて、うちのS−8
 をベースに参考紹介します。

◎ 〜資料編〜での内容は、    
 ・S−8で使っているエンジン・K5型機関の分解図と部品名称一覧、
  および解説。
   
 ・同トランスミッション・QM3型の分解図と部品名称一覧、および解説。
   
 ・同クラッチ、プライマリチェーンケースの分解図と部品名称一覧、
  および解説。
   
 ・その他、紹介できうる範囲についての資料。

◎ S−8以外のメグロ車でも同じかヒントにはなる内容かと思いますので、
  みなさんのお役に少しは立てるかなと考えております。

◎ 掲載資料はわたしの独断的判断と経験で作成・修正を行っているモノ
  ですので、場合によってはS−8の仕様と異なる部分もあります。

◎ 参考にされる方は各自の判断で行ってください。不具合の発生について
  は責任持てませんのでお願いします。

           それでは「S−8メンテナンス」〜資料編〜を宜しくどうぞ!

 S−8メンテナンス 〜資料編〜(クラッチ機構)


(部品名称一覧はこちらを参照下さい)

 今回はクラッチ機構についての紹介です。
メグロのクラッチ機構は従来乾式でした。構成も一般的なクラッチプレートの接触により駆動伝達される方式です。 プレートの間に在るフリクションディスクには摩擦接触材としてコルク板が張られています。
金属とコルクの摩擦係数は乾燥接触で0.35とされてあり一般的です。ところが・・・
S−8のクラッチ機構は湿式です。S7より変更されています。 しかし実はクラッチ機構の構成は殆ど変えられて居りません。部品の半分近くにS5 からの流用がされています。
このようにクラッチ機構が変遷した事由についての詳細は未だ確認できませんがメグロに於けるクラッチ機構の状況から推測しますと 乾式クラッチ機構であるS3ではフロント(プライマリ)チェーンカバーからの漏油が 激しいと云う実態があります。本来シールによって隔離されるべきエンジン出力軸および変速機メーンシャフトから、シールの経時劣化、磨耗等 により漏油し易くなるのが原因との様子です。続くS5よりカバーからの漏油対策なのかチェーンカバーがアルミキャストによる密閉型に改良 されますが、相変わらず乾式クラッチ機構のままです。基より500cc・Z7の仕様を 採用しただけのようですが。しかし改善されたのはチェーンカバーから外部への漏油についてであり、要因であるエンジンや変速機から チェーンカバー内への漏油はあまり改善されて居りません。或るS5ユーザーの話では「湿式クラッチ機構の如くチェーンカバー内は漏油に浸っていた」 と云う状況のようです。ですがそれが事由でクラッチが滑る等の不具合を聞いたことがありません。どうやらその辺りにメグロのクラッチ機構 の成り行きを観ることができそうです。
敢えて乾式クラッチ機構の構成を変えずに湿式にした理由としてはこのような事情ではなかったかと思うのですが、先の通りS7よりクラッチ機構が 湿式となった事由についてはセルモーターの搭載が関係あると考えます。 詳しくは後章にて記述しますがウォームギヤ駆動にオーバーランニングクラッチを組み込んだセルモーターのギヤ部を潤滑するにはグリース充填か 密閉ギヤケース内で油槽潤滑することが必要となります。グリース充填は定期にメンテナンスが必要であり耐久性にも難があります。 また新たに密閉ギヤケースを設けるにしても新規部品が増す等のコストアップ、更には新たな漏油を心配することにもなります。 「現状でもチェーンカバー内は漏油で浸っているのだし、それが事由でクラッチが滑る等の不具合が無い。」となれば、チェーンカバー内の漏油を 利用しない手はありません。最初からチェーンカバー内に注油してセルモーターのギヤ部を潤滑させれば最小限の部品変更で済ませられたのです。 同様の理由からか古い英国製乗用車(二輪ではない)でもセルモーター付きのためにコルク板フリクションディスクによる湿式多板クラッチ機構 の事例があります。またその後はメグロ以外のメーカーでも同様の事例があるようです。
クラッチ機構に関してはS7初期型より一貫して居りますが上記のような事柄を思うにセルモーターの無いS7初期型では乾式仕様の扱いが されていたのではとも考えられます。ただS7初期型にオイルを注入したとしても影響は無いと思います。

さてメンテナンスの要点としては、その#10:フリクションディスクでしょう。現役車においては摩擦材であるコルクの磨耗度合いを確認 します。
気を付けたいのは#15:クラッチスプリングのヘタリ、および#16:クラッチスラストピンの形状的要因により #9A・#9B:クラッチプレートが均等に面接触できていない場合の偏磨耗です。
ヨシカワオートクリニックの吉川さんによるとクラッチスラストピン の傘状部分(#9B:クラッチプレートBに当たる部分)が小さいことによるウィークポイントであるとの由。 悪くするとクラッチの切れが悪くなったり逆に滑りを生じる場合があります。対策が必要な状況でしたら問い合わせされることをお勧めします。 また不動車の場合はクラッチプレートとの張付きを起こしている場合があります。こうなるとフリクションディスクの摩擦材は剥すしかありませんから 摩擦材の張替えが必要です。
フリクションディスクの摩擦材は著しく磨耗あるいは変質(変色劣化・炭化)してあれば張替えが必要です。また著しい偏磨耗の場合も同様です。
クラッチスプリングは5個の自由長を計測して40mm以下であれば交換が必要です。また5個が均等であるか確認し不均等であれば、これも交換が必要です。
#16:クラッチスラストピンと#17:プッシュロッドの間には供回りを防止する#31:スチールボールが入りますのでお忘れなく!
#3:ローラーリテーナーに在る#8:ローラー・1/4×1/4"も重負荷により多くは打痕・摩滅を生じているようです。 できれば交換されることをお勧めします。
いずれの場合も先のヨシカワさんで対応可能ですので宜しければ問い合わせを。
#1:クラッチスプロケットは案外丈夫な部品です。歯の磨耗が想定されますが、交換等処置が必要になったと云う話を聞いたことがありません。 もし歯の磨耗または浸水等による発錆で再使用が難しい状況でもヨシカワさん、あるいは専門業者にて対応可能であることが殆どかと思いますので、 諦めずに問い合わせされることをお勧めします。
#29:フロントチェーンは#420を使用しています。何故か多くのメグロオーナーがこのチェーンのローラー破損を経験しているようですので メグロ特有のウィークポイントであるのかもしれません。元のチェーン強度の問題か構造的な問題かは不明ですが一度もレストアされていない車で あれば注意しておくことをお勧めします。
フロントチェーンの交換についてはS−8メンテナンス・バックナンバー 「プライマリチェーン」 にて解説致して居りますので参照下さい。
クラッチ操作が渋い場合の一因としてクラッチオペレーティング関連部品の異状が想定できます。
特に現役車においては#22:ボールリテーナーコンプリートの鋼球異状(磨耗・破損)が有るようです。
できれば部品交換ですがヨシカワさん等、諦めずに問い合わせされることをお勧めします。
#28:クラッチワイヤーコンプリートの動きが渋い場合、ワイヤーにはkure5-56や専用潤滑剤の注入で、ワイヤー先端部のタイコやワイヤーエンド にはグリースで処置します。 特にワイヤー先端部は切れ掛かることが多い箇所です。ワイヤーの解れ・部分断線しているようであれば複製品による交換もできますがホームセンター等で ステンレスワイヤーを用意してリビルドすることも可能です。
クラッチ機構のレストアに関しては、以前「別冊MC」誌にて連載されていた、先のヨシカワさんによる「錆まみれのメグロS7再生記誌上レストア通信講座」から、 2000年7月号掲載の「クラッチリビルド編」が参考になるかと思います。図書館もしくは古書店などでお探しされるようお勧めします。



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